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アーカイブシリーズ2「無意志無感動に暦を過ごし、ようやく三連休に辿り着いた」

 無意志無感動に暦を過ごし、ようやく三連休に辿り着いた。

 私はメール友達に会いに東北まで行くことにした。しかしながら出発前に既に疲れていた。幾多の労働で、自分の長所が嘘であり、短所が増殖している気がしていた。

 私は会社を丸三年勤めるという目標を達した四月から痴呆の態度をもって過ごしていた。道具箱に入れたはずの工具が入っておらず、どこに放置したか分からない状態が幾度も続いた。呆けていた。私は能力が無くて難儀した。そうして重々しい現実に涼やかな風を注ぐ女性を求めてメール友達を探した。

 ようやくメールを数回やり取りする相手ができた。お相手は同い年のサービス業で働く女性(26)。小柄で肌が白くてミディアムのストレートヘアーと云う情報だけで、後はメールで雑談を毎日やり取りしているだけで顔画像などは送りあったりしない。一番心肺なのはこちらのメールのイメージと実際にあってのイメージが相反していないかが気がかり。メールなんて所詮、指の体操だからなあ。 

……。

 初日、私は駅へ行き、北越に乗り、新潟でラーメンセットを食べてからいなほに乗り、Y県の某駅に七時間掛けてやってきた。車窓は田圃と畑ばかりであった。

 今宵は軽い散策をして街の穏やかな様子を見て、今はホテルに引きこもっている。

 明日会う人を想像できるのは今日までである。私も想像されているのである。慎ましく生きたいのである。

……。

 二日目、ビジネスホテルのベッドの上、三時四五分に目が覚める。家に居るときも最近この時刻に目が覚め、二度寝の苦しみを味わっている。

 二度寝。七時に起きる。

 八時半に朝食をとる。

バイキング形式である。私は豚野菜の煮物と唐揚げ、サラダなどを取り、庄内米を器に盛り付け、ふむと四人席を一人陣取り、黙々と食す。

平らげて腹八分目。それで止しておけばいいものをまた器に米飯を盛り、カレーを注いだ。腹が一杯になった。

 部屋に戻り、チェックアウトの準備を進めてながらにラジオを掛けていると、某宗教のラジオがやっている。自分を焦らせることは自己弁護で、自分を誤魔化す行為だと某大川氏が述べていた。なるほどと思った。

チェックアウト。小雨の中、歩く。ホテルの冷蔵庫に飲みかけの爽健美茶を冷やしたまま出てきてしまった。いらねえや、と吝嗇な思いを打ち消す。

 待ち合わせの公園に着くもまだ時間まで二時間ある。

 私は歩きながら、会う女性に対し、開口一番何を喋ろうかと思い過ごす。大義そうに喋るべきか、何かしら気の利いた台詞を言うべきか、結局思い浮かばない。

続いて微笑を浮かべる練習をした。目を開いて歯が見えるように。しかしながらにらめっこをするような男の顔が水たまりに映っていた。

 公園を散策する。とある直木賞作家(故人)の記念館があったので入る。書斎が再現されていて面白かった。文藝春秋が積まれていたり、農協の通帳がほったらかしになっていたり生活感がある。

出る。雨が降ったり止んだり、折り畳み式の傘なのでしまったり出したり難儀する。

歩く、歩く。遠くから太鼓の音が聞こえる。工業高校がある。野球部が応援の練習をしているようだ。

歩いたり、雨が止んだらベンチに腰掛けたりして時間を過ごす。正午を回る。十二時半過ぎに相手方が到着する予定だったがメールはまだ来ない。

ぼんやりと池を眺めると軽鴨が数匹、脇で休んでいる。

嘴で腹を掻いているものもいる。悲鳴のような鳴き声が聞こえる。孔雀のような大きな鳥が小屋に閉じ込められている。小屋の外では烏が皮肉そうに飛び回っている。

十二時半を過ぎた。公園内の神社前にいます、と女性にメールする。

なかなかメールは返って来ない。軽鴨を物憂げに眺める。

しばらくすると、今家から出ます、とのこと。女性はサービス業で朝から働いている。今の時期は忙しいのだろう、と曇り空をぼんやり眺める。

一時を回る。神社の鳥居にいると女性がやってきた。

……。

 神社の前にある像は口髭を蓄え、角張った余裕のある威風堂々とした顔をしていた。私もこのような態度を取れる人間になりたいと思った。するとワンピースの出で立ちで、メールで教えられた柄のそれを着た女性は小走りにやってきて、メールで教えた目印の袋を抱えた私に声を掛けてきた。

 遅くなってすいません。いえいえ、お仕事大変なのにすみません。

 会話が始まった。私は最初何を喋ろうかとかそんなことを考えていたことがどうでもよくなり、流れに任せることにした。

家庭的な顔立ちで優しそうな色白の小柄な女性と私は神社で会った。そうして蕎麦屋に出向いた。

店に入る。席に座る。お冷やが出される。

「昨日はどこに泊まったのですか?」

「○○ホテルです」

「そこ前に私が勤めていたホテルです!」

「そうなんですか」

ワンピースの柄と色白の肌がマッチしている。

気が付くと、自分が過去の女性と話していた頃よりも多く喋ろうという気になっていた。向上心である。大学で何を専攻してただとか、今の仕事のこととか。しかし口下手には限度があった。

早く蕎麦来ねえかな、とうっかり思いながらお冷やを少しずつ啜っていた。焦りはいけない。私は女性と一緒に過ごす時間を大切にしなければならない。


蕎麦が来る。二人、啜る。古風な上品そうな女性だと思う。食べ終わり、店を出る。

歩く様も素敵だ。

そうして女性の車の助手席に乗せてもらった。神社らしきところに到着する。

雑談をしながら神社を歩く、二人。何を話したのかは忘れた。

その後、駅まで送ってもらい、お土産を交換し、我々は微笑をもってして別れた。

帰りに買ったその土地の名産のさくらんぼ、ひどく甘酸っぱかった。

 

 

-2012年7月13日から16日までの日記から抜粋・編集-